小学校〜高校くらいまで、そこそこ本を読んでいた。高校時代など、古文・漢文・世界史etc.が大嫌いだったので、授業中に教科書ではなく本を読んでいた。2〜3日で1冊程度のペースだったと思うから、単純計算で年間120〜180冊は読んでいたことになる。
泣くほど感動したり、面白くて何度も読み返した本がたくさんあったはずで、しかしその内容も、タイトルも作者名も、もうほとんど忘れてしまった。
高校時代の、妙にはっきり覚えている数少ない記憶というと、高野和明のジェノサイドを読んだ後に久坂部羊の第五番を読んで放心したことと(物語の内容は2%くらいしか覚えていない)、現社の授業中に何らかの本を読んでいたら隣の席の生徒にタイトルを尋ねられたのでここぞとばかりに布教したこと、浅田次郎のエッセイが好きだったことくらいか……。
そして先日。
とある本を読んで大変感動したので、その話を母にしたら「中学生のときにも読んでたよね」と言われた。全く記憶になかった。母がこの作品を愛しているということはなぜかずっと覚えているのだが、自分が読むのはこれが初めてだと思っていた。
「そのときもあんたすごく感動したって言ってたよ、あれは嘘だったの?」
本当に読んだのか読んだふりをしてついた嘘だったのか(何のために…)、それすらもわからない。
衰退の一途を辿っている私の悲しい記憶力からすると、たぶんまたそのうち読み返して、初めてみたいに泣くんだと思う。それはそれで、なんだかお得な感じがするからよしとするか。